校庭の木々もみずみずしい芽を吹き、藤戸の地にも春を感じさせる今日の佳き日に、保護者の皆様方のご臨席を賜り、岡山県立倉敷天城高等学校第七十二回卒業証書授与式が挙行できますことは、教職員一同大きな喜びであり、感謝に堪えません。心から厚く御礼申し上げます。本来であれば、岡山県教育委員会をはじめ、多数のご来賓をお迎えし、在校生とともに盛大に挙行する運びでありましたが、新型コロナウイルス感染症への対応のため、生徒の健康を第一に考える観点から、このような式典になったことをご寛恕願いたいと思います。
   さて、ただ今、蛍雪の功なって卒業証書を手にされた普通科百九十三名、理数科三十七名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。今日に至る三年間の勉励とこの栄誉に対し心からねぎらいとお祝いの言葉を贈ります。
 皆さんが晴れて今日の日を迎えることが出来たのは、皆さん自身の努力、精進の賜物であると同時に、常に温かい愛情をもって励まし支えてこられた保護者の方々、本校はもちろん、小学校、中学校の先生方、更には、本校創立以来、陰に日向にご支援をいただいております多くの方々のご援助の賜物であります。どうかこの点にも思いをいたし、感謝の気持ちを忘れず、一層の精進をされるよう期待して止みません。
 思い起こせば、学校生活の様々な場面で活躍した皆さんの生き生きとした姿が思い出されます。日々の授業はもちろん、課題研究で自分の興味あるテーマをとことん研究し発表したこと、社会貢献活動で小学生たちを親切に指導したこと、部活動で日夜精進し優秀な成績を収めたこと、種々のコンテスト等で素晴らしい結果を残したこと、東雲祭で下級生をリードし、パフォーマンス・展示・ステージ・スクリーンの、それぞれの部門で素晴らしい成果をあげたことなど、数え上げればきりがありません。その時々で、皆さんは、「鉄軒精神」を培い、身に付けられました。「質実剛健」「勤勉力行」「不撓不屈」にまとめられる「鉄軒精神」を胸に、皆さんはこれから自分の選んだ分野での飛躍を期して、将来に進んでいくところであります。次の新しい目標に向かって自信と自覚を持って旅立ってほしいと思います。皆さんは、「令和」に改元されて最初の卒業生となります。「令和」には、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められているそうです。その「令和」という新しい時代を力強く生き抜く皆さんの人間的成長の推進力となる向上心、特にそれを支える心構えについて、私の思いを二点申し上げ、餞の言葉にしたいと思います。
その第一は、「絶えず自己啓発に努めてほしい」ということであります。皆さんがこれから大人になって生きるのは、生産年齢人口の減少、グローバル化の更なる進展や絶え間ない技術革新等に伴う厳しい挑戦の時代です。それだけ私たちは新しい知識や技術の習得のために、あるいは主体的な情報活用能力や情報選択能力の涵養のために、あるいは様々な精神的、文化的欲求を満たすために、更には激変する社会に主体的に対応できる能力を身につけるために、絶えず学習を継続することが必要であると思います。よりよく生きるためには常に学ぶ心を忘れず、一生を通じて学んでいく姿勢が大切であります。まさに一生は努力と学習の積み重ねであり、生きることは学ぶことであります。
 第二は、「信頼する心を持ってほしい」ということであります。皆さんはこれから今までよりも更に広い未知の世界で暮らすことになります。社会はまるで織物のように縦横に絡んだ人と人との繋がりによって成立しています。そして、その繋がりは「信頼」という糸をねりあわせて紡がれているのであります。社会には色々な思惑もあり、人間関係も高校時代のそれとは格段に複雑でありますが、社会がどのように変わっても信頼がなければ社会生活は一日として成り立たないでしょう。痛みのわかる温かい心を持って、人間相互の信頼と協力の輪を広げるよう努めてください。長い人生の中には、幾度かこの信頼が覆されることがあるでしょうが、背信に対しても、なおかつ信頼の心で接する優しさを私は皆さんに期待いたします。
さて、皆さんも本校校友会の一員となった今からは、同期の友情はもとより、後輩や母校に対して、限りない愛情を注いでください。母校に立ち寄り、頼もしい姿を見せてください。教職員一同、皆さんを温かく迎えるとともに、一期一会の言葉のごとく、皆さんとの出会いを大切にしながら、倉敷天城高等学校を一層発展させていくことを約束してお別れにしたいと思います。
最後になりましたが、今日まで熱心に慈しみ育ててこられました保護者の皆様には、お子様のご卒業誠におめでとうございます。卒業という節目を迎えられたお子様の姿に、感慨もひとしおのことと存じます。この三年間、本校発展のため、多大なご支援、ご協力をいただきまして、誠に有り難うございました。今後とも本校発展のためにこれまでと変わらぬお力添えを賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。

令和二年三月一日   
岡山県立倉敷天城高等学校 校長 白神敬祐