ご好評をいただいている姉妹編の「物理基礎 英語定義集」の公開から7年間かけてようやく完成にこぎつけました。物理,英語の学習や英語での論文・ポスターの作成にぜひお役立てください。

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「物理 英語定義集」の表紙です

巻頭言
岡山県立倉敷天城高等学校
校 長  藤 井 省 吾

 このたび,既刊の「物理基礎 英語定義集」の続編となります「物理 英語定義集( Japanese-English Physics Vocabulary with English Definitions)」を刊行するに当たり,一言ご挨拶申し上げます。
 本校は,平成17年度に文部科学省からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けて以来,理数教育に関するカリキュラム開発の一環として国際性の育成にも力を注いでまいりました。平成24年度には「英語が使える科学技術系人材の育成のための戦略構想」を策定し,これまで継続的に実践を行っており,成果を上げています。この構想の趣旨は,「間違えてもよいからどんどん英語を使っていこう」と呼び掛け,英語を使う抵抗感を小さくする試みで,本校が命名した科学英語読解メソッドPaReSK(パレスク:Paragraph Reading for Science with Key Words)の理念の下,併設中学校及び高等学校の理科や課題研究の授業などでの実践を積み重ねています。その研究成果物として,平成26年7月には,本校の元講師で現在京都にお住まいのRamon Fargas先生の多大なご尽力により,「物理基礎 英語定義集」を刊行いたしました。このブックレットは,国内のSSH校やSGH(スーパーグローバルハイスクール)校はもとより,国内の大学の留学生や外国人教員,一般の高等学校における帰国生徒のための教材として,また,外国の大学で,日本の大学に留学する準備のための講座などでもご活用いただいていると聞いております。また,AO入試や推薦入試の準備のために活用し,見事合格を勝ち取ったとうれしい報告をしてくれた高校生もいると聞いております。このように,国内外で様々な目的で活用され,好評をいただいている「物理基礎 英語定義集」の続編を,7年間にわたる関係者の地道な努力により,PaReSK 10周年に当たります今年度,ようやく世に出すことができ,感慨ひとしおであります。
 本書を手にした高校生の皆さんが,日々の物理の学習や課題研究などで活用され,将来科学技術の世界で国際的に活躍されることを願ってやみません。
 最後になりましたが,日ごろから本校のSSH研究開発事業をご支援・ご指導いただいております,文部科学省初等中等教育局,同省科学技術・学術政策局,国立研究開発法人 科学技術振興機構,岡山県教育委員会,本校SSH運営指導委員の皆様に深く感謝申し上げます。また,本校SSH運営指導委員で指定第Ⅰ期から本校科学英語の充実に多大なご尽力をいただいております岡山大学の喜多雅一 名誉教授をはじめ,これまで本校の外国人教員(非常勤講師)としてお勤めいただいきました同大学大学院への留学生・教員研修留学生の皆様に,紙面をお借りして厚く御礼申し上げます。

【作成者より】
◯ルシアン グレニー(Lucian Glenny:岡山県立倉敷天城高等学校 ALT)
There’s a quote often attributed to Einstein that goes something like “Everything should be made as simple as possible, but no simpler”. It’s a great quote, but like so many quotations that have the man’s name underneath, he never actually said it. Einstein’s original quote was, ironically, much longer and more complicated. But the point was the same: as long as we account for all the necessary information, simple explanations are the best. I think this is excellent advice not only for a physicist, but for a language learner too. If we make things simple, communication in a second language becomes easier, faster, and more fun.

To the reader:

Writing and reviewing this book was an exercise in clear, simple communication. We worked hard to explain the principles and vocabulary of physics using language that you can understand (with a bit of effort and study), while keeping all of the scientific content intact. I hope this book will make it easier for you to access materials written in English, and give you valuable experience in using English in a scientific context. Good luck and have fun!

To my colleagues:

Contributing to this project was a real privilege; thanks for involving me and for giving me the chance to do some science again. Working on this book was a pleasure. I hope that it will inspire more students to make the most of the language skills they’ve developed, and continue to study both physics and English with confidence and creativity in the future.

◯仲達修一(Shuichi Nakadachi:岡山県立倉敷天城高等学校 教諭)

 「仲達:Let’s have a definition meeting around 10am.」「Lucian:Sounds good!」という会話で毎朝始まり,ようやく本書の完成にこぎ着けました。平成27年9月にRamon先生が岡山を去った後,先生が執筆された原稿をALTのLucian(英国の大学で物理学を専攻)が引き継ぎ,年2回Ramon先生をお招きして,ゆっくりとしたペースで編集会議を持っていました。ところが,令和2年にはコロナ禍による休校という思いがけないことが起こり,教材作成の時間を多く確保することができました。この間ほぼ毎日2時間程度のミーティングを持ち,ようやく本書の完成にこぎ着けることができました。
 「Sounds good!」を直訳すると,「いい響きだね。」となるでしょうか。英語は音声言語と言われているように,今回は「音」「響き」にこだわって作成しました。候補となる同じ意味を持つ複数の単語がある場合,文章全体を3人のメンバーで音読してみて,「よい響き」がする方を採択しました。そして音読を重ね,全体の「響き」がよりよくなり,美しいフレーズとなるよう語順や接続詞などを調整していきました。少し英国風に仕上がっているかと思います。内容的には,私たち高校の物理の教員が授業で説明する程度のもので,高校生が辞書なしで意味を理解できるよう,日本語のルビを付しています。
 私の世代が大学生のころ,教官からよく「明治期の『お雇い外国人』は二流や三流などではなく,一流の学者を呼んできていて,一軒の家が建つほどの高給で雇っていた。我々はその土台の上に乗っかっているのだ。」という話をよく聞かされたものです。今日の日本の科学技術の礎を築いてくださった当時の英国人をはじめとする外国の学者や日本人学生のたゆまぬ努力に思いを馳せながらミーティングを重ねてきました。このミーティングは江戸末期の「蕃書調所」の逆バージョンとも言えるかもしれません。
 多くの日本の高校生が物理・英語の学習や課題研究の英語での発表などで活用してくれることを願っています。そして将来,科学技術の世界で世界を牽引してくれることを期待しています。
 なお,令和4年度にはLucianが本書の文章を読み上げた音声データの作成に着手しています。完成し次第アップする予定です。ご期待ください。
 それでは英国の響きと香り,そして味覚(本文中にpuddingが登場します)をお楽しみください。

◯白神 陽一朗(Yoichiro Shirakami:岡山県立倉敷天城高等学校 実習助手)

 本校発刊の,英語で書かれた物理関連書籍も3冊目になりました。自身の,アメリカで過ごした学生時代を思い返すと,このような本があればもう少し楽に勉強できたかな,と益体もない回想をしてしまいます。「もしこの本を手に取る皆さんの中で,国外へ留学するつもりがある,または日本へ留学に来ている方がいれば,本書は強力な補助教材となる・・・といいな」と思って作成しました。是非役立ててもらえれば嬉しいです。
 本書を作成するに当たって,過去2冊と同じく日本人学生が辞書なしでも理解できるよう,おおよそ高校2年生以上で習う単語にはルビを付しています。英語を読んで,英語のまま理解できるのが理想ですが,最初はそう上手くはいかないと思います。そのため,訳を必要とする際にはより自然な形に翻訳しやすいように語を選んだつもりです。複数の単語で一つの意味(日本語の一つの単語)となるものには,それらの単語全体にまたがる形でルビが振られています。文字も小さく少々読みづらい部分があるかもしれませんが,読者の皆さんの助けになれば幸いです。