日時:令和4年7月30日(土)
場所:倉敷市大畠(おばたけ) 周辺の海岸
参加:岡山県立倉敷天城高等学校 理数科1年次生37名
講師:洲脇清 様(現地にお住まいの本校元教員)

【概 要】本年度も「蒜山研修(2泊3日)」の代替として,「夏の特別ラボ講座」を実施しました。7月29日(金)と30日(土)の両日の午前には「情報Ⅰ」とプログラミング(Python)の特別講座を実施しました。データの表現と扱い方など課題研究に直結した内容の講義がありました。30日(土)の午後,学校を出発しフィールドワークとして海岸研修を実施しました。講師として,地元にお住まいで,小学生から年配の方までを対象とした「海岸の生物観察会」を実施している本校元教員の洲脇清様をお招きし,今年も充実した研修となりました。 午後12:30頃,バスで学校を出発しました。30分ほどで大畠(おばたけ)の海岸に到着し,「児島地区漁村研修交流センター」での開校式と講話の後,海岸に生息する生物を探索しました。また,指標生物による水質の判定を行いました。

 海岸での実習に先立ち「児島地区漁村研修交流センター」で講師から,戦前・戦中・戦後の児島・水島地区の海の環境の変化についての貴重な講義がありました。主な内容は次のとおりです。

【戦前】

 戦前には水島に海水浴場があったそうです。漁業と干拓農業の地域でした。レンコンの栽培も盛んでした。

【戦中】

 水島には航空機の製作工場があり,空襲によって破壊されました。空襲の日には,水島の空が真っ赤に見えたそうです。

【戦後】

 戦後,港湾整備と企業誘致が進み,環境が大きく変化したとのことです。油くさいチヌ(黒鯛)や背骨の曲がったボラなどが出現したそうです。このころ,漁師さんたちは将来の漁業を断念し,サラリーマン志向になったり,養殖漁業や観光業(釣り船)など多角化を目指したりしたそうです。

 1974年には石油工場からの重油流出事故が発生し,岩場が真っ黒になったそうです。ワカメやノリなどの海産物がほとんど収穫できませんでした。また,島嶼部のハマチの養殖場は全滅したそうです。沿岸部の貝類への影響(油臭)は長期にわたり,完全に収まる(砂を掘って油膜が浮かばなくなる)まで7~8年かかったそうです。

 瀬戸大橋の工事が始まるころには,環境アセスメントの実施により環境への負荷の少ない工法が取られました。講師ご自身,調査の依頼を受け,海に潜って橋脚が建設される予定の海域に生息する魚の調査をされたとのことです。イカナゴなど特定種類の漁獲量が減少しているそうです。

 海ゴミ問題として,環境ホルモン(船底の塗料に含まれるトリブチルスズ)の影響でイボニシのオスがメス化し,個体数が激減したそうですが,現在はこの塗料は使われていなく,回復しているようです。また,マイクロプラスチック(ビニル袋やペットボトルなどが波浪や紫外線により5mm以下に細片化されたもの)の問題も発生しています。

 今年も 有限会社下津井造船所 様のご厚意により敷地を通らせていただきました。波が引いた瞬間をねらって急いで渡り,実習場所に向かいました。正に「綱渡り」です。実習終了後,引き返すときには潮が引き,余裕で渡れました。お仕事中ご協力ありがとうございました。
 潮が引いた研修場所に到着後,講師から説明を受けました。
 カメノテです。肝臓によく効くそうです。昔は薬屋さんがよく取りに来ていたとのことです。味噌汁に入れると美味しいとのことです。
 いろいろな貝が生息していました。このほか,巻貝もたくさんいました。
 実習終了後,交流センターの玄関前で生徒代表がお礼の言葉を述べました。講師から「皆さんの中からぜひ海の環境保全に取り組む人材が出てほしいです。また,小学生などを対象とした海岸の生物観察会に興味のある人は是非連絡してください。」とのお話がありました。一連の研修を通して海の環境保全の大切さと,このすばらしい環境を次世代に伝えることの大切さを実感した1日でした。